“今度”には魔物が棲んでいる(ことがある)

通常、「今度ゆっくりご飯でも食べましょう」という発言における“今度”は、決して到達することのない時間軸上の一点であり、「じゃあ、予定を入れておきますから」などという“スケジュール調整”とはおよそ無縁な“約束”であることは火を見るより明らかだ。これはまあ、お中元やお歳暮と同じ虚礼に属するもので、深く追求してはイケナイたぐいの言説であり、念押しや確認などは“無粋なヒト”とされるので、注意が必要だ。ヒッチハイカーは難しい。もっともきれいなおねいさんに「じゃあ、また今度ねー」などといわれると、「今度っていつだよー」と返したくなる気持ちもわからんではないが。

無粋にはなりたくないヒッチハイカーとしては、だから2週間前に交わした当たり障りのない駄メールにおいても、「今度ゆっくり話がしたい」というキーフレーズにも、それほど深く考えることなく「そーですねー」などと返していたわけだが、相手は実は切羽詰っていて、本日、急遽ランデブーとなり、泣きながらおっとり刀で東南およそ30Km地点に走る。

ランデブーの用件は、8月2日にツールを出す。ついては8月3日リリースの瓦版にその記事を掲載してほしい。内容はコレコレで、弊社意向としてはトップのカラーページを丸々いただ。えーと、すみません。その号はすでにFixしていて、今から変更を加えるなんてことはできない相談なんですけど。いやいや、そこをなんとか。いや無理ですって。無理を承知でお願いしておる。承知の上の無理は無茶ですぜ。無茶でもいいから。無茶のごり押しはわがままです。そこは重々わかっておる。これこのとおり。頭をあげてくださいよ。だいたい、それじゃ私が死んじゃいます。ではおれに死ねというのか。山はどうですか。海は死にますか。

死ぬの死なないの大騒ぎをして、結局、号外をつけることになった。なったのはいいのだけれど、どう考えても原稿があがるはずがない。じゃあ、原稿をあげていただいて、その上で判断させていただきます、といって逃げ帰る。

こーゆうことがあるから“今度”というフレーズには細心の注意を払わなければならない。

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