「バンドでギターを弾いてくれ」というお誘いにはホイホイ乗ってしまうほうなので、スタジオ入りしてはじめてそのバンドの指向性を知って愕然としたり、レベルの差に驚倒したり、人間性に泣きを見たりと、恥と冷や汗は人一倍かいてきている。
まあ、さすがにこの年齢になると、おいそれとはバンドのお誘いに乗るわけにもいかず、その前にデモテープ(相変わらずMDが主流みたいだけど)とか、直に会って話を聞くようにしている。
実は最近もお誘いがあって、ちょいと会社を抜け出し、話を聞きにいったのだが、それはそれは物凄いバンドでございました。
新規にバンドを立ち上げようとしていて、現在はベースとドラムスとボーカルのトリオ。ここにギターを入れたい。ボーカルはまあまあ唄える男性で、これまでハードロック/ヘビーメタル系の音楽をやってきている。ドラムスは女の子でシロート。したがって刻めるリズムはスクェアなハチのみ。ただしかなり揺れる。
ワイシャツにスコッチイエローのネクタイを締めた、“さわやか系会社員”ふうの対面相手はバンドリーダーでベース弾きだが、ベース演奏を極めるというより、むしろ作詞/作曲をやりたい。何曲かストックもあって、それらは(本人曰く)椎名林檎とかAIKOっぽい世界だったり、(本人曰く)「生と死」をテーマにしたものとか、(本人曰く)芥川龍之介のような世界観に彩られたものだという。
「曲は普通にメロディをつけてるけど、バンドメンバーが変わればサウンドやアレンジも変わるものである。そこで、あなたなりの解釈でかまわないので、ギターで参加してくれないか」。
持ってきてくれていたMDで旧バンドの音を聞いたのだが、そのー、歌詞がどうのとか世界観を云々する以前に、一時期流行った(いまも流行ってるのかもしれない。知らないけど)“純文学ハードロック”っぽかったせいか、おれの耳は「聴くな!」と拒否権を発動して大変なことになる。
お声掛けいただけるのは大変うれしいのだが、多少はこちらのバックボーンというものにも留意していただけると、もう少しスムーズな勧誘ができるのではないかと思う次第でございます。
まあ、そんなこと言いながら、後に彼らが大ブレークした時のことを考えて、とりあえず“音楽仲間”というジャンルでお茶を濁すことにしたおれもおれだが。